こんにちは。

元素の入手方法だけを書いていても面白くないので、
高校化学で教えてくれないことをちょっと書きます。

今年の6月に縁あって愛媛県に行ったのですがその際、
別子銅山か市之川公民館か関川に行きたいとわめいて(笑)
前日が大雨だったので別子銅山関連の施設を訪問してきました。

そこで教えてもらった情報と、以前TVで紹介された情報が
しっかりつながったので忘備録的に。

2016年1月に鉄腕◯ASHという番組で、鹿児島県の菱刈鉱山
から金を含む石英メインの鉱石を100kgもらって、
灰吹法で金を取り出す様子が放映されたが、その際
現在の金の取り出し方を見せてもらうことはできないかと
尋ねて、断られるシーンが有った。
鉱山の切羽(鉱石を掘り出す最深部)まで見せてもらって、
なんで精錬を見せないかな?と思って調べた。
金を取り出すという操作をメインでやっていないというところが理由かと。

掘り出した金鉱石はメイン(鉱脈をメインで構成する物質として「脈石」
または「脈石鉱物」という)で石英(二酸化ケイ素、SiO2)が含まれている。
今でも海外のひどいところだと、水銀を混ぜて、金アマルガム(金と水銀の合金)
を作って、これを加熱して金だけを取り出したりしている。
少し進んだところだと、金鉱石にシアン化化合物(青酸カリや青酸ソーダ)をかけて
錯体として金を抽出している(青化法)。

菱刈の金鉱石はこのどちらとも違って、銅鉱石からの銅精錬に活用される。
銅鉱石としての主力は黄銅鉱(chalcopyrite CuFeS2)でこれを
加熱酸化+還元することで、銅を抽出するが、銅を抽出する際に
鉄までくっついてくる。銅がほしいのに鉄がくっついてきては困る、ということで
鉄を除去、ついでに融点を下げるために二酸化ケイ素が必要になる。
二酸化ケイ素はこのプロセスに存在すると
鉄と反応してFeSiO3 ケイ酸鉄・・・俗称カラミ として溶融金属の上に浮遊する。
黄銅鉱より低温(1200℃~1300℃)で溶融して、黄銅鉱の融解を促進(融剤)。
・・・高校化学で、アルミニウムの電解精錬において、酸化アルミニウムの溶融塩電解に
  加える氷晶石(NaAlF4)と同じ役割。
という役割を果たす。

ついでにいうと、黄銅鉱CuFeS2の中のS(硫黄)は酸化されて
SO2(二酸化硫黄、亜硫酸ガス)になり、江戸時代や明治時代は大気汚染の
原因でしたが、回収技術の開発が進められ、硫酸、硫酸アンモニウムとして
肥料にする手段が大正時代に実用化されています。

こうしてめでたく銅が溶融金属として入手できると、この中に、菱刈鉱山からの
金が溶け込んでいます。銅を電極棒として成形し、高校化学で出てくる
電解銅の製造プロセスが実施され、銅は99.99%となり、
金は陽極泥(アーノードスライム)として濃縮回収されます。