ちょっと思うところがあって、手持ちの石を岩石薄片にしています。
といっても、学術的に、何かを発見しようというわけではなく、
外見と、薄片で微細構造を見た場合とで、ギャップを楽しもうという意図です。

岩石薄片を作る技術は、古典的な原色鉱石図鑑(保育社)等にも記載があるように、
遊離砥粒研磨という方法が用いられます。具体的には、岩石を適切なサイズにカット、
片面を鉄板やガラス、めのうの平板上で、炭化ケイ素(SiC、カーボランダム(R))や
最近では炭化ホウ素B4Cの研磨剤を水に混ぜてガリガリ削ります。
この平板は机の上に固定して使いますが、お金があると、モーター駆動で動く
円盤(研磨盤)になります。

この遊離砥粒研磨(スラリー加工とか泥磨きともいう)のメリットは、
1.研磨材の粒度を変えるという低コストの変更で、同一設備で異なる
  面粗さ・加工能率を得ることができる。
2.研磨材が様々な方向に動くので、加工面が無方向性の面(梨地等)になる
 (研削加工のように加工方向に筋がついたような面にならない)。
3.研磨材の粒を余すことなく利用することができる(角ばったポイントをほぼ
  すべて利用できる)。

デメリットは、
a.同一設備で異種粒度の研磨材を使うので粗い粒度の研磨材の洗浄残りがあると、
 研磨傷(スクラッチ)の原因になる。
b.砥粒の使用効率が低い。・・・イメージは、砂場の砂の上に手を置いて動かす感じです。
 多少力を入れて砂に手を押し付けたとしても肌が傷つくことがないのと同じです。
c.硬さの違う物質が混ざりこんだものを削ると、軟らかいポイントが優先的に削られる。

遊離砥粒加工は産業的に普通に使用される技術なので、効率を上げるための工夫が
いろいろあります。
例えば、上述の円盤には、球状黒鉛鋳鉄や溝を掘った鉄板等が使用されます。
球状黒鉛鋳鉄は鉄の中に黒鉛によって形成されたくぼみがあり、また溝ありタイプは、
溝に研磨剤が入り込んで引っかかり、研磨の能率を上げるように工夫されています。
このくぼみや溝は、研磨盤が回転することで生じる遠心力によって、研磨剤を含んだ
液体が一気に飛び散らないことにも役立ちます(研磨材を分散させた液体自体も、粘性を
持たせるなど工夫されています)。

目的によっては、くぼみや溝のないタイプの円盤が使用されることもありますが、
その場合は円盤自体が、錫(すず)やプラスチックの複合材などの、やや軟質な材料で、
使用中に自然と円盤に研磨材が突き刺さったり、作業前に円盤に研磨材を埋め込む
(シーディングとか言う)作業があり、研磨盤自体をあたかもサンドペーパーのような状態
にして使います。

ネットで数年前に作成されたような岩石薄片の作成テキスト類をチラ見したのですが、
相変わらず遊離砥粒研磨が全盛です。が、個人で研磨材を数 ㎏とか入手すると
使いきれないのと、研磨盤なんかないので平面の上に研磨材を塗布して手作業すると、
効率悪いと思う次第です。
始めはサンドペーパーを使っていましたが、固定がめんどくさいのと、時間と共に、
裏の紙も劣化してくるので、砥石を使えばいいんじゃねと思いついた。

実は、これは小学校の頃にやったことのある方法。
家にセメント砥石っぽい包丁研ぎ用の砥石があったので、砂利の中から見つけた泥岩とか、
変成岩とかの軟質っぽいのを砥石で削って平面を出して、Vixenの生物顕微鏡で、
右手に懐中電灯を持って無理くり反射観察して遊んでいた記憶があります。

今は、中国製のダイヤが安いので、中国製のダイヤ製品を安く入手。ダイヤを金属板の上に
電着(電気めっきで金属と共に接着)なのか接着剤なのか不明な安物のナイフ研ぎ砥石板が
20 ㎜×150 ㎜で約300円。これがよく切れる。炭化ケイ素のついたサンドペーパーで
削れないものも、ダイヤのご利益か、しれっと削れる。
F220ダイヤのついた研ぎ板で、花崗岩でも100往復ぐらいこすると約0.5 ㎜削れる。
あ、この時、水をかけた方がいいです。ダイヤの粒の隙間に削りカスがたまりやすいのと、
ダイヤの熱損傷を防ぐために、水(できれば水500 mLに台所洗剤を1-2滴入れたもの)を
かけてやると砥石の汚れ(目詰まり)が少なく、滑りもやや良くなるので使いやすいです。

実は、包丁研ぎ用の回転砥石装置(セールの時に6000円台で買った)を所有している。
これに中国製の外形150 ㎜(6 インチ)ラッピングプレートっていう、@約1000円の
ダイヤ付き円盤を買って、装置につけられるように、厚めのアルミ板で押さえを作って、
ねじで固定できるようにしたので、これで#240ダイヤの電着板を使うと数ミリの花崗岩が
1 分くらいで0.数 ㎜になる
(回転数が制御できてないので怖いから、インバーター等を追加しようと思っている)。
この後は手で前述のナイフ研ぎ砥石板でカリカリ削る。

220番の次は600番、さらに1500番で磨くと風景が映り込むぐらいには鏡面になる。
研究目的じゃないので、弁柄とか酸化クロムでさらに鏡面にまではしなくていいだろう
と思っている。スライドグラスにシアノアクリレート(アロン〇ファ等)でくっつけて、
反対側からまたガリガリ削る。
最近、耐衝撃アロン〇ファが出たのでこっちの方がいいかもしれない。ガリガリ削るときの
衝撃で意外によくはがれる。2液のエポキシ樹脂接着剤(アラル〇イト等)の方が
耐衝撃性はいいけれど粘度が高いので、薄く貼りにくい。

接着理論上は、接着物の周りに接着剤がはみ出しているほうが、接着強度は高いらしいが、
あまりはみ出していると、削るときの抵抗が少し大きいような気がする。

あまり長く書いても微妙なので、この辺で。
下は、岩石薄片の世界ってどんなものか、眺めてもきれいな本です。